​協働研究プロジェクト #002

女性管理職が受けるセクハラ─実態と特徴

金井 郁 氏(埼玉大学人文社会科学研究科 教授)

労働経済論とジェンダー論を専門にしています。日本的雇用システムにおいては、男性正社員が中核だと言われていますが、いわゆる“中核じゃない”人たち、一般職、パートタイム労働者、雇用と自営の間のような働き方をしている生命保険の営業職やタクシーのドライバーさんなどが、企業の中でどのように位置づけられているか、日本社会でどのように位置づけられているか、というような研究をしてきました。現在は、日本の管理職の役割と機能がどのような特徴をもっているか、その女性に与える影響などについて研究しています。

 

今回私が提案するセクハラの問題については、私自身の専門分野ではありませんが、数年前から関心は持っているテーマです。なぜ問題関心を持ったかというと、2018年3月に韓国の政治家の女性秘書が上司の政治家から性的暴行を受けた際に「国民のみなさんが守ってくれるなら、ほかの被害者も出てくると思う」という発言がきっかけになっています。被害者が声を上げたときに、社会が被害者を守るということではじめて、Me Too運動のようなものが可能になるのではないか、ということを感じました。

 

セクハラの問題は、お茶の水女子大学のシン・キヨン先生が言っているように、男女関係の問題として軽く扱われてしまったり、逆に過度に誇張されてしまうことがあります。それはいまだに社会のセクハラに対する理解が低水準にあることを表しているのではないか、といった声もあります。セクハラという言葉は浸透しましたが、いまだに、何がセクハラなのか、組織がどう対応すべきか、といった理解は十分行き届いているとは言えない状況だと思います。

 

セクハラに関してはいろいろな先行調査があり、2020年に行われた、管理職と非管理職に分けた、スウェーデン・米国・日本の3カ国による比較研究があります。管理職になれば地位も高くなるので女性も被害に遭わないかと思うと、非管理職の女性よりも管理職の女性の方がセクハラに遭う割合が高いということが明らかになりました。また、部下に男性社員が多い職場の方がセクハラに遭いやすい、セクハラ被害を告発すると管理職の女性の方が報復に遭いやすい、といったことも分かっています。

 

また、日本の特徴として、客観的にはセクハラと考えられるような状況でも主観的にセクハラと認識していないことや、課長クラスの女性がセクハラ被害に遭った割合が他国と比較して高い点などの問題点が指摘できます。

 

ソーシャルアクションタンクの協働研究プロジェクトでは、地位別にハラスメントの種類がどういう風に変わって、だれからどのようなセクハラを受けるのか、ということを、特に管理職の女性について考えてみたいと思います。

同時に、ハラスメントを生み出さない組織的特徴、逆にいうと、生み出す組織的特徴を、明らかにできたらと思っています。

 

セクハラを受けないということは、女性管理職を増加させる、ということだけでなく、私たちが人間として働いていくための基礎的な条件ですので、そういったことを目指した調査を考えていきたいと思います。

 

この調査では、3カ国調査の内容を参考にしながらアンケート調査もしくはヒアリング調査を実施していきたいと考えています。調査においては、女性を相手に聞き取り調査を行うことを考えると、女性のプロボノワーカーのみなさんにはぜひ多数参加していただけたらと思っています。

(2021年5月15日 研究構想発表会の金井先生の発表内容をもとに事務局作成)