​協働研究プロジェクト #001

育休や短時間勤務による人事考課への影響とは

大槻 奈巳 氏(聖心女子大学人間関係学科 教授)

社会学で労働とジェンダーを中心に研究しています。特に、女性がなぜ基幹労働者になっていないのか、ということを、職場に女性が働き続けられない・続けたくない状況があるから、という「職場重視モデル」から考えてきました。


最近の調査研究としては、女性の管理職志向が低い理由や、派遣労働者の働き方、女性と男性とで割り当てられる仕事の違いなど、いろいろな調査に取り組んでいます。

ソーシャルアクションタンクにおける今回の調査では、育休や短時間勤務による人事考課への影響について皆さんとご一緒に考えていきたいと思っています。具体的には、育休や短時間勤務を取得すると、人事考課にマイナスになるのではないかという点について、実際に育休や短時間勤務を取得した人や企業の人事部などへの調査ができないかと考えています。

育休取得者は女性の約8割が取得している一方で、男性は7%ぐらいしか取得していません。
いま女性管理職の占める割合は増えていますが、今後、育休や短時間勤務を取得することが人事考課においてマイナスの影響をしてしまうと、これから10年後、15年後に、管理職になる女性があまり増えることがないのではないかという危機感も持っています。

また、短時間勤務の制度を7割ぐらいの企業が導入しています。この短時間勤務が長期化しているということが言われています。法定の3歳未満までが55%ですが、小学校まで短時間勤務をしてもいいよと言っている会社も2割ぐらいあり、短時間勤務が長くなる傾向があります。

東京都による、育休を希望通り取得しなかった男性への調査では、1割ぐらいの男性は「昇進・昇格・評価に影響があると思ったから」と答えています。

ただ、東京都の同じ調査で男性の取った育休の期間は「1~5日程度」が約55%で、6カ月以上取っている人は0.05%にすぎません。これに対して、厚生労働省の調査ですが、女性の場合は、10~12カ月が約3割、12~18カ月が約3割ということで、男女で育休取得期間は全然違います。もし評価に響くとしたら女性の方に影響があるといえるのではないでしょうか。

2012年の先行研究で、「育休を取得しても昇進が遅れない」と回答する会社は中小企業で6割、大企業で5割ぐらいありました。でも同じ調査で、「育休と同じぐらいの期間昇進が遅れる」と回答している企業は中小企業で約3割、大企業で約4割あるという結果も出ています。

調査を行った周教授は、13カ月以上の育休を取得すると人的資本投下が下がる、つまり、知識とか技能を新たに得ることが少なくなるからではないか、あるいは、それだけ長期間の育休を取るということはキャリア志向が低いというシグナルを出してしまうからではないか、といったことを示唆されています。


私としては、1年休んだからといってキャリア志向が弱いとなぜ思われなければいけないのか、といった思いを持つところです。できればこの内容を一歩進めた調査ができればと思っています。

短時間勤務について、人事考課においては時間当たりの働き方を評価するようにと言われていても、結局は、時間をかけた働き方のほうが評価される傾向がある、ということが指摘されています。
また、私の卒業生の話ですが、2011年入社でいま32歳の女性の場合、現在短時間勤務中で、ボーナスの査定は評価の最低ランクとなっています。まわりにいる短時間勤務の同僚はみな同じだそうです。等級は入社5年目の28歳のときから上がっていません。この会社だと年功で職位が上がっていくので同期は係長クラスになっているが、本人は主任のままで、5年間、ランクが一つも上がらないということを言っていました。

育児休業制度はたびたび改正されていますが、改正の特徴が、育休期間が延長になっているということです。原則1年ですが、保育園に入れなかった場合は2歳になるまでというようにだんだんと長くなっています。また、短時間勤務制度は設置が義務付けられるようになり、しかも、従業員がこの制度を長めに取得できる方向に進んでいます。

休んだのだからマイナスで当たり前なんじゃないか、という考え方もあるかもしれません。ですが、子どもを産んだということが、働くうえで“ペナルティ”なのか、そのへんをどう考えるのか、ということを、みなさんと考えていくことができたらと思っています。

調査研究としては、育休や短時間勤務を取得した男女を対象に、人事考課への影響があったかということについてヒアリング調査を実施したいと思っています。可能であればアンケート調査も考えています。


さらに可能であれば、職場の管理職と人事部に、育休や短時間勤務と人事考課への考えをヒアリングで聞ければと思っています。

(2021年5月15日 研究構想発表会の大槻先生の発表内容をもとに事務局作成)